神さま ヨナ。
(ヨナ、顔を上げる)
ナレーター 神さまは、ヨナによびかけて言われました。
神さま ヨナ。ニネベの町へ行き、人々に伝えなさい。あの町では悪がはびこっている。人々はわしのことをわすれ、ぜいたくでわがままなくらしをしている。このままなら、わしはあの町をほろぼす、と。
ヨナ えー、あー、はい…。
ヨナ (歩きながらひとり言) 何でこの私が…ニネベなんて大きな町、ただ歩いてひとまわりするだけだって、三日はかかるぞ。 ぶつぶつ。もともと悪いやつらなんだから、ほろぼされちまえばいいのに。 ぶつぶつ。
ナレーター ヨナはヨッパの港につきました。
船長 タルシシゆきー。出発しまーす。お乗り遅れのないよう。ー
ヨナ あ?タルシシ行き? 乗ります、のりまーす。まってー。
(ヨナ、船のタラップをかけのぼる)
ナレーター ヨナは神さまとの約束をやぶり、ニネベとは反対の、タルシシ行きの船に乗ってしまいました。
(船、ゆっくり岸壁をはなれてゆく。)
ナレーター ところが、まもなく海はおおあらしになり、船は今にもしずみそうです。
(波のスライドをゆらしながらかぶせる)
船長 このままではだめだ! みんな荷物を海にすてて船をかるくするんだ! そして神さまにお祈りしよう。
(船長、ねむっているヨナに気づく)
おい、あんた! お客さん! 寝てる場合じゃないっ! あんたもおきて神さまにお祈りしてくれ。
(ヨナ、しぶしぶ起きて甲板に上がって行く。 他のお客たちは、荷物を海に投げ込んでいる。)
お客A こんなひどいあらしには今まで出あったことがない。 これはきっと、この船の中に、神さまを怒らせたやつが乗っているにちがいない。 そいつを見つけるんだ。
お客B でも、いったいどうやって?
お客A くじを引いて決めよう。
ナレーター 船に乗っていたお客たちは、いったい誰が神さまにそむいて、神さまを怒らせたのかを調べるため、くじを作ってみんなで引きました。くじは、ヨナに当たりました。
(一同、ヨナを見る)
お客A あんたのせいか。 あんたは、なに人だ?どこから来て、どこへ行くんだ? 仕事は何だ。
ヨナ 私はヨナと申します。ヘブルびとです。実は、神さまの言いつけにそむいて、ニネベへ行かず、にげてきたところです。 だから、このあらしはみんな私のせいです。 私を海にほうりこめば、みなさんは助かるでしょう。
(一同、顔を見合わせる。)
船長 い、いや、とにかく。みんなで船をこいで、少しでも岸に近づけよう。
お客たち そうだな。とにかくやれるだけのことはしよう。
(全員で船をこぐ)
船長 そーれ! いち、にい、いち、にい。
全員 いち、にい、いち、にい。
ナレーター しかしあらしはますますひどくなり、船はいっこうに進みません。
船長 いち、にい、いち、にい。
全員 いち、にい、いち…もうだめだー。
船長 しかたがない。やはりヨナを海になげよう。 ああ、神さま、どうか私たちのすることをおゆるしください。 アーメン。
全員 アーメン。
(全員でヨナの手足を持ってもちあげる。)
船長 それ。いーち、にーの、さーん!
(ヨナ、海に落ちてしずんでゆく。 船と波のスライドをすこしずつ上げてゆき、ヨナが沈んでいくように見せる。不気味な音楽。そこへ魚が登場。 ヨナを一口でのみこんでしまう。)
(照明を消していったん暗くする。 胃袋とヨナの用意が出来てから、照明をオンにする。)
ヨナ うぅ。 私は助かったのか…? ここはどこだ? それにしても、暗くてくさい。 ああ神さま。 私を助けてください。 ここから出してください。もしここから出られたら、今度こそ本当にニネベにいき、神さまのことをつたえます。
(もう一度照明を消して暗くする。 海のスライドと魚、ヨナの用意が出来てから、照明をオンにする。)
魚 うっ、うぇっ、はっくしょーい!
(ヨナ、ふきとばされて見えなくなる。魚、およぎ去って行く)
C F C ヨナ ニネベ へ いらっしゃい C いいえ いきたくなーい。 C F C ヨナ ニネベ へ いらっしゃい C いいえ いきたくなーい。 C Em B7 C 大きなさかな ヨナを のんだ C B7 B7 C#dim G ヨナはおそれて たすけて たすけて C F C ヨナ ニネベ へ いらっしゃい C はいっ いきます。
(歌いながら、町の背景のスライドを出す。 ヨナ、何か話している身振り。 町と、町の人たちを横にずらし、ヨナが歩いていくように見せる。)
ナレーター 神さまはおこっておられる。悪いことをすぐにやめなさい。 そうしないと40日後には、神さまがこの町をほろぼされる。 ヨナはニネベの町中を歩いて、大声でつたえて歩きました。
(王さま登場。)
王さま わしも今まで、やりたいほうだい生きてきた。 神さまのお怒りはごもっともだ。 今すぐに、悪い行いはやめよう。 みなのもの。 今日から何も食べてはならん。 ぜいたくな服はすぐにぬぐのだ。 そしてわしと一緒に、いっしょうけんめい神さまにあやまろう。 もうておくれかもしれん。 しかし、もしかしたら、神さまが思い直し、怒りをしずめられるかもしれぬ。
(王さま、一度引っ込んでから、かんむりをはずし、そまつな服で出てくる。王さまの横に、ニネベの町の人が次々に出てきて、そまつな服でならんですわる。)
ナレーター 初めヨナは、どうせだれも言うことなんか聞きはしないと思っていましたが、ニネベの人たちは、ヨナの話を聞くと、深く反省し、神さまを信じて、悪いおこないをやめたのです。 王さままで、ぜいたくな服をぬぐと、そまつな服に着替え、神さまに心からあやまりました。
(照明を消して暗くする。)
神さま ヨナよ。
ヨナ はい。
神さま わしはニネベの町をほろぼすのはやめようと思っておる。 みんな、心をいれかえたようじゃ。
ヨナ はぁ? これだからいやなんですよ。 結局私が何もしなくったって、神さまは人間をほろぼしたりなんか、しないおつもりだったんでしょう。 あー、ばかばかしい。 ニネベをほろぼさないのなら、かわりに私の命をとってください。もう生きているのがいやになりました。
神さま おまえはおこるが、それは正しいことか?
(ニネベの町が下の方に見えるように置いてから照明をつける。)
ヨナ (ヨナ、高台にすわる。) よっこらしょっと。 さて。 40日目になったら、神さまが本当はこの町をどうされるのか、ここから見物するとしよう。
(お日さまのスライドをかぶせる)
ヨナ あー。それにしてもここはあついなぁ。 (汗をふくしぐさ)
(とうごまの木が、ヨナと太陽の間にのびてくる。)
ヨナ おや? これはこれは。ちょうどいい日かげができた。 たすかった。
(お日さまのスライドをいったんひっこめる)
ナレーター ヨナは、とつぜん生えてきたとうごまの木をとてもよろこびました。 ところが神さまは、次の日の明け方に、虫にめいれいしてとうごまの木を荒らさせたのです。
(お日さまのスライドをもう一度出してくる。とうごまはかれてしまう。)
ヨナ あーっ。あーあ。 せっかく日かげができていたのに。かれてしまった。 あつい、あついよぅ。 神さま、こんなに苦しいなら生きているのはいやです。 ああ、あのとうごまの木さえあれば…。 あ~、とうごまや~い。 (かれたとうごまをつまみあげてながめる)
神さま ヨナよ。おまえはとうごまの木のことでそんなにおこっているが、それは正しいことか。
ヨナ もちろんです。 もう死んだ方がずっとましです。今すぐ私の命をとってください。
神さま ヨナ。おまえは自分でたねもまかず、なんの世話もしなかったこのとうごま一本でさえ、こんなにもおしんでいる。 わしが、大切なこのニネベにすむ12万人のひとのいのちを、おしまずにはいられない気持ちが分かっただろう?
(照明を消す)
(全員スクリーンの前に出て歌う)
C F C ヨナ ニネベ へ いらっしゃい C いいえ いきたくなーい。 C F C ヨナ ニネベ へ いらっしゃい C いいえ いきたくなーい。 C Em B7 C 大きなさかな ヨナを のんだ C B7 B7 C#dim G ヨナはおそれて たすけて たすけて C F C ヨナ ニネベ へ いらっしゃい C はいっ いきます。