巨大絵巻物しばい「むねあかどり」(抄録)

2001年11月26日上演

セルマ・ラーゲルレーヴ 作
イシガ オサム 訳
「キリスト伝説集」(岩波書店)より

模造紙をつなげて長い絵巻物をつくりました。


――いいかね、おまえの名はムネアカドリだよ! できあがると神さまは小鳥にそうおっしゃいました。そしてごじぶんの手のひらにとまらせ、お飛ばせになりました。





ムネアカはあいもかわらずちっぽけな灰色の小鳥なのさ。今でもまだ赤い胸毛をもらうことが出来ないんだよ。





あのあわれな人たちを十字架に釘付けにしてもまだたりぬとみえて、ひとりの人の頭にはとげだらけのイバラの冠まではめたんだよ。

そら、額にイバラが刺さって血が流れている。





《弱い小さい小鳥の身でも、この苦しんでいる気の毒な人になんとかつくすみちはあるにちがいない》



そしてそばまでとんでゆくと、十字架の人の額に刺さったとげをそのくちばしで引きぬきました。





ところがそのとき、十字架の人の血がひとしずく、小鳥の胸に落ちました。しずくはみるみるひろがり、伝わり、短い柔らかな胸毛をすっかり染めてしまいました。





けれども小鳥がどんなに水をあびても、その胸の赤い色はもはや消えませんでした。






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