バリアフリーは健常者と障害者との間だけではなく、健常者と健常者、障害者と健常者、障害者と障害者との間においても、バリアを除去する努力が必要だと思います。ようするに、あるグループとグループ間ではなく、人間と人間との間で必要な要素だと思います。
人と人との間でのバリアは、その原因が何であれ、無数の誤解から始まるように思います。例えば、私は、健常者は万能な人、当たり前に私より器用な人だと思っていました。ところが、いろんな人と接しながら、それは誤解であったことに気づきました。同じ動作、例えば落とした物を見つけてもらうとき、その人の経験によってそれに気づいたり、気づくことができなかったりするのです(とても当たり前ですが)。
健常者が障害者に対して思うこともこれに似ているのではないでしょうか。時々、マスコミから取材を受けることがありますが、そのたびに感じるのは、多くの健常者は、障害者を極端に誤解しているように思えることです。「障害者は食べることも歩くことも本を読むこともできない」「障害者は素直である」「障害者は障害ゆえに何かにとても優れている(例:視覚障害者は触覚が優れている、視覚障害者は聴覚が発達している)」、などなど。
相手を理解することは簡単ではありませんが、相手に興味を持って、相手と接し、何度もコミュニケーションをすることで、少しずつ自分と同じく普通の人だと思えるようになるのではないでしょうか。
以下、質疑応答の一部です。
Q:視覚障害者は目覚まし時計をどのようにセッティングするの?
A:今は、視覚障害者用グッズとして、音声時計があって音声ガイダンスを聞きながらセットします。
Q:音声時計がないころは?
A:アラーム設定スイッチをまわしてアラームをならして、それが今の何時という風に覚えて、そこからカチカチとまわしながら数えて合わせました。そんなにずれませんでした。
Q:聴覚障害者は、教会の説教を聞くことができるのか?手話通訳はあるのか?
A:数ヶ所の障害関係教会の礼拝に参加しましたが、手話通訳がついた説教があるところはありませんでした。でも、最近は音声認識ソフトとネットを利用して、話した内容を瞬時に字幕表示できるものが出ていますので、その気があれば、不可能なものではないと思います。手話を知らない人と聴覚障害者とのコミュニケーションのために、MSNメッセンジャーなどのチャットが、授業などに利用されるケースもあります。携帯メールもその一つです。
Q:視覚障害者は、大学内食堂など、セルフサービスで食事を頼むときはどうしているの?
A:視覚障害者にとって、セルフ式の食堂は大変不便です。味噌汁などの汁物を載せたお盆を持ちながら空いている席を探すのは、こぼす危険があります。私はこのような食堂には、一人では行きません。見える人と一緒に行くようにしています。視覚障害者の中には、店員さんに手伝ってもらう人もいます。
Q:視覚障害者は、料理はどうしているの?
A:場所などが慣れていて、材料に関する事前情報を持っていれば、料理は不便ではありません。自分の身体とコンロとの関係をキャッチしていれば、普通にできます。(火のぬくもりを感知しているのだと思います。)ただし、慣れていない場所では、確認しながらでないと難しいでしょう。
Q:洋服を買うとき、どのように選んでいるの?
A:今までの経験を通して大体の私のスタイルを記憶しておいて、一緒に買い物に付き合ってくださった人に伝えます。たいがいは、展示されているものを触って、デザインなどいいものがあったら一緒にきてくれた人に色を聞きます。色は一緒に来てくれた人のセンスになりますね。大体、外れはありません。
大学の成績表がプリントされた紙媒体で渡されるので、視覚障害者は自分の成績を、友人などに頼んで読み上げてもらわなければならないことがあります。簡単にワードファイルなどのデータで渡せばすむことなのに。このほかも、普通文字の給与明細書、様々な機関からの郵便物や、銀行のタッチパネルATMなどは、視覚障害者のプライバシー保護を難しくしています。