代々木上原教会青年会

2005年11月20日「憲法9条の改正案をめぐって」(担当:AS)

1.「憲法改正について」世論調査(朝日新聞による)

◆憲法第9条と自衛隊の関係について、あなたの考えに最も近いものは、次のうちどれですか(択一)。

これまで政府の解釈や運用で対応してきたので、憲法改正の必要はない 6%
自衛隊は今のままでよいが、憲法を改正して、その存在を明記する 58%
自衛隊ではなく普通の軍隊とするために、憲法を改正すべきだ 12%
自衛隊は違憲の存在であり、段階的に縮小して将来は廃止すべきだ 7%
その他・答えない 7%

◆自衛隊の海外での活動は今後、どうすべきだと思いますか(択一)。

海外での活動は一切すべきでない 8%
カンボジアのような、国連平和維持活動(PKO)まで認める 45%
イラクのような、戦闘が続いている国での復興支援も認める 27%
日本の国益にとって必要なら、武力行使も認める 15%
その他・答えない 5%

2.自民党の憲法改正草案(憲法調査委員会が議論のための叩き台として提出したもの)

第二章 安全保障

第九条(平和主義)

 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

(※この項は現行日本国憲法のまま)

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。(※削除)

第九条の二(自衛軍)

 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を保持する。

2 自衛軍は、前項の規定による任務を遂行するための活動を行うにつき、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

3 自衛軍は、第一項の規定による任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。

4 前二項に定めたるもののほか、自衛軍の組織及び統制に関する事項は、法律で定める。

3.憲法改正の手続き

 憲法を改正する場合、現在の日本国憲法(96条の【憲法改正の手続】)では、以下のような手続きが必要だとされています。

1.この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

2.憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

改正しようとする自民党・公明党・民主党は、国民投票法を可決して改正の準備を行っています。

4.憲法問題の際によく出る意見

護憲派

  1. そもそも自衛隊の存在が違憲である
  2. 軍事力に拠らない平和を外交によって目指すべきである
  3. 全ての戦争は自衛の為という名目で行われてきている
  4. 軍隊は国を守っても国民は守らない
  5. テロリズムに対して軍隊は無力である
  6. 近隣国の信頼を得ること無しに、軍事力を強化しても、平和は訪れない
  7. イラク戦争のような国連の合意を得られない戦争に参戦してしまう

改憲派

  1. 占領下に押しつけられたものである
  2. 60年前に作成されたため、現状に則していない
  3. 自衛隊は誰がどう見ても軍隊である。軍隊であるものを軍隊でないと言う矛盾を解消すべき
  4. 憲法を厳密に守っていては国益を損なうため
  5. 日米安保という「約束」を履行してもらうためにも、米国と一体となった行動が必要となる
  6. 自衛権は全ての国集団が持つ権利である
  7. 国際社会に対する責任として、平和維持活動などの人的支援を行う必要がある
  8. 東アジアという不安定な状況で、国民の生命・財産を守るためには軍事力が必要(拉致・テポドン・潜水艦)

5.キーワード

「自衛権」

自衛権(じえいけん)とは、他国からの急迫不正の侵害に対して国家の生存を確保する国際連合憲章中に定める権利であり、国家固有の権利である。

「個別的自衛権」

他国からの武力攻撃に対し、実力をもってこれを阻止・排除する権利。

社会契約説によれば、国家の主権は個人の自然権の集合であり、個人の自然権には「生存する」という権利が最も基本的なものとして含まれている。そのため、国家にも生存する権利が自然権として存在することは明白であり議論を待たない。

日本の場合、日本国憲法に平和主義が規定されているが、憲法が自国の生存を根本的に否定するとは考えられないので、「日本も自衛のために実力を行使することは許されている」という解釈が有力である。

ただ、あらゆる国家が行う戦争は自衛戦争と主張されている事から、憲法第9条は全ての自衛権をも否定した非武装中立を意味しているという考え方も存在する。

「集団的自衛権」

自国と密接な関係にある他国に対して第三者による武力攻撃があった場合に、自国が直接に攻撃されていなくても、第三者による武力攻撃を実力をもって阻止・排除する権利。

一般には、国家は個別的自衛権と集団的自衛権の両方を持っているとされる。ただし日本の場合には「集団的自衛権を持ってはいるが、これを行使することは自衛のための必要最小限度の範囲を超えるため憲法上許されていない」という解釈が有力である。

ただ、国連憲章を見る限り、集団的自衛権は第三者による、自国および自国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃に、共同で対処する権利と読むのが自然である。この中で当然に上記の権利を含むものと解するのが適当であろう。政府解釈は憲法9条との関係から、上記の狭義の「集団的自衛権」を定義する必要に迫られたものと見られる。

簡単に言えば、日本に対する侵略に日米が共同でこれの排除に当たること自体が集団的自衛権の行使である。

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