2007・5・27

音声を聞く(MP3, 32kbps)

「ペンテコステの奇跡」

村上 拓

使徒言行録 2,1-6

おはようみんな。今日はなんかいつもと違うよね? 今日はペンテコステの音楽礼拝です。だから、教会学校のみんなだけじゃなくて、大人のみんなもいます。
そんな中、お話をするんだけどね、実はとっっても緊張しています。普通にみんなの前で話す時も緊張するのにね、今日はこんなにいっぱい人がいて、頭の中が真っ白になりそう。
失敗したらどうしよう・・うまくいかなかったら? こわくて心臓がドキドキしています。

でもね、きっとイエス様のお弟子さんたちもドキドキしていたんだと思います。
イエス様が復活して、天に昇って。今度はお弟子さんたちが神様の言葉伝えるの。
きっとね、とっても緊張していたと思う。
恐くてね、不安でね、ドキドキして震えていたんだと思う。
それでも、イエス様のお話を伝えようってペンテコステの日にみんなで集まりました。

するとそのとき、激しい風が吹きました。そして天から炎のような舌が、メラメラメラって降りてきて、お弟子さん達の頭の上に燈りました。
お弟子さんたちは急に勇気が湧いてきて、外に出ると集まっていた人々にイエス様のお話を伝え始めました。 すると、不思議なことが起こったのです。
そこには、いろんな国からきた、言葉も、見た目も、考え方も全然違う人々がたっくさんいたのに、みーんな、お弟子さん達の言ったことがわかりました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この話を聖書で読んだとき、僕は、「すごい!奇跡だ!」と思いました。
でもね、「ん?ちょっと待てよ・・この奇跡は、知ってるぞ!」とも思いました。
僕はね、14歳のときに本当にこの奇跡が起こったことがあります。

14歳の春休み、僕はネパールって言う国に行きました。
ネパールって知ってる? ネパールはね、インドの北の方にある国です。
富士山より高い山があったり、緑の畑がずっと続いたり。乾燥した熱い風の吹く、綺麗な国でした。
そのネパールにある小さな病院で、14歳の僕は、10日間お手伝いをしました。

ある日、その病院の患者さん達と自由にお話をする時間がありました。
通訳さんは「じゃぁ楽しくお話してくださいねー。一時間後に戻ってきまーす。」といってどこかにいってしまいました。
さぁ困った・・・どうしよう・・
もう誰も頼れる人はいない。かといって何もしなかったら始まらない。
ふぅー・・よしっ! って思いました。 行くぞ!・・行くぞ。
・・体が動きません。
こわい。もしちゃんと会話できなかったらどうしよう、うまくいかなかったらどうしよう、あとからあとから不安が押し寄せます。
ドキドキして、手先は冷たくなって、目の前が真っ暗になりました。
もうダメだって思いました。
するとそのとき、心の中から声が聞こえました。

「勇気を出しなさい。大丈夫だよ。」

その声を聞くと、(ポッ)、僕の心に勇気の炎がつきました。
よし、とにかく出来ることを精一杯やろう。

そこで僕は画用紙とクレヨンをとると、近くにいたネパール人のおじいさんに渡しました。
そのおじいさんは、一生懸命何かを描くと、こう言いました。
「これは鳥の絵なんだけどね、病気で手が震えてうまくかけないんだよ。」
そこで、僕は、「いいえ、そんなことないですよ。上手に描けてます。でもホントはこう描きたかったのかな?」と答えました。

僕とおじいさんはお話をしました。
ネパール語しか話せないネパール人のおじいさんと、日本語しか話せない日本人の男の子。
でもね、僕とおじいさんはお互いが何を言っているのか完璧にわかりました。
二人の心が通じ合って、想いが伝わったの。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ペンテコステのあの日、きっとイエス様のお弟子さん達も声を聞いたんだと思う。
緊張して、恐くて、不安でも、うダメだ思ったとき、風の中にイエス様の声を聞いたんだと思います。

「勇気を出しなさい。大丈夫だよ。」

イエス様は優しく語りかけてくれます。
メラメラメラってお弟子さんたちの心に炎が燈りました。
炎は暗かった心を照らし、冷たかった手先を暖めて、勇気をくれます。
よし、自分に出来ることを精一杯やろう。
お弟子さんたちは、イエス様はいつでもそばにいて、勇気をくれるんだってわかったの。ひとりじゃないんだってわかったんだね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それからもうひとつ。

お弟子さんたちはね、出て行って、偉そうに、「おいお前ら、今から話すから勝手に通訳して聞け」っていったわけじゃありません。
そこにいた人々ひとりひとりのところにいって、その人の言葉で、その人にわかるように話しました。

イエス様も、偉そうに天国で「おい」って言うんじゃなくて、私たちのところに来て、本当に助けを必要としてる人のそばにいてくれたよね。

世界にはね、いろんな人がいます。
目の色が違ったり、肌の色が違ったり。着ているものや食べているものが違ったり。
全く知らない言葉を話す人々もいます。
ときどきね、同じ日本人なのに何を言ってるんだコイツ、って思うこともあります。

でもね、「オレが正しいんだ、オレの話を聞け!」って言っているうちは、本当に相手のことはわかりません。 その人のことを本当にわかるためには、その人のところに行って、その人と本当に心をひとつにしなくちゃいけない。

それはね、すっごくこわいことかもしれない。
でもね、僕たちはひとりじゃありません。
いつでもイエス様がそばにいて、「勇気を出しなさい。大丈夫だよ」って言ってくれます。

ペンテコステという日は、お弟子さんたちの心に炎が燈った日のことです。
でも、それだけじゃありません。
私たちが、「こわいけど、自分に出来ることを精一杯やろう」って思ったとき、イエス様はいつでもそばにいて、天からの炎が、私たちの心の中に燃えています。
お祈りします。



礼拝説教集の一覧
ホームページにもどる